新年明けましておめでとうございます。
旧年中はひとかたならぬご愛顧にあずかり心よりお礼申し上げます。
さて、久しぶりにブログを更新するわけなんですが、今回は
「消費増税以降、飲食店で何がおこっているか?」
を書かせて頂きたいと思います。
もちろん、全ての飲食店に当てはまる訳ではないですし、
あくまで自分の店と、自分が知りうる限りのお店での話ですのでご了承下さい。
増税以降と言っても、正しくは2019年10月以降と言った方が正しいですね。
・消費税が8%から10%に増税
・軽減税率のスタート
・キャッシュレス還元
主にこの3つについての話です。
まずは消費税。増税の良し悪しは政治コメンテーターに任せるとして、
8%から10%になりました。
お店でお客様からお預かりする消費税も10%になりました。
消費者からの目線で言えば、2%の額の差です。
前回の5%から8%への増税時に比べれば、駆け込み需要も増税後の冷え込みも
軽微であったと言われています。
さて、僕らの様な小規模なお店では何が起こっているか?
僕らはお客様からお預かりした税金を国に年1回。もしくは2回、払っています。
お預かりしているので、勘定科目は仮受消費税で売上ではありません。
お店で消費して頂いた金額に対して、税金を預かり、記帳し、申告し、納税しています。
まあこれだけでも面倒くさいのですけどね。
預かっていたお金を収めるだけですので、損はしないはずです。
ただ、お客様の財布事情もあり、「今日は一人1万くらい」の腹積もりの方もいますし、
一番多いのが、「一人あたりコミコミ○万円でお願いします」という接待の場合です。
お店も13年目になると、有り難い事に、そんなに売上の浮き沈みは無いです。
閑散期や繁忙期はありますが、前年同月との比較はあまり変わりません。
増税して、単純に2%の総売上アップがあれば良いのですが、実際はそうではありません。
そうするとどうなるか?総売上中に占める消費税額が上がります。納税額が増えます。
では僕ら事業者が収める税額は2%増えるのでしょうか?簡単な計算で言えば25%増えます。
8%が10%になると、増えた割合は2%ですが、税額は25%増!なんです。100万が125万になるんです!
(厳密には仮払消費税がありますので単純ではないのですが)
預かっているお金を返すべき場所に返すだけなのですが、一気にお金が無くなるのは結構辛いです。
これが、消費増税において起こっている事です。
次は軽減税率です。
こちらは一見、話が簡単です。食材の購入・テイクアウトは8%。僕らのような飲食店は10%。
テイクアウトは活況のようです。僕らも負けずにお店で飲食する価値の創造に励まなければいけません。
が・・・簡単じゃない話があるのです。それは経営上不可欠な経理の話です。
今までなら、仕入れの伝票やレシートをそれぞれ仕入・消耗品・福利厚生費等々・・仕訳して記帳していました。
それが、今回は、さらに税率までも入力(選択)しなければいけません。
八百屋や魚屋で買い物をする分には8%なので一手間増えるだけです。厄介なのは食材もお酒も扱う総合商社などです。
一枚の伝票を品目ごとにそれぞれの税率に分けて記帳しなければなりません。
支払いを振り込んだ際もそうです。記帳は10%分がいくら、8%分がいくらと分けて記帳する必要があります。
うちのような小さなお店でも、莫大な仕訳があります。もし税務調査でここを突いてくるのであれば、
「やってみろ!」と言いたいくらいの量です。
この経理作業の増加が軽減税率で起こっている事です。
伝票を税理士に丸投げできるお店には関係ないかもしれませんが、税理士さんには同情します。
最後にキャッシュレスポイント還元です。
これに関しては、キャッシュレス化を進めお金を「見える化」し、今まで税額をごまかしていた事業者が言い逃れ出来ないようにし、
税収を増やすという政府の意図が見え見えですが、先進国の中でもキャッシュレス化が遅れている日本の現状を考えると当然の政策でしょう。
簡潔に言うと、消費者がキャッシュレス決済をすると、対象店舗や決済会社にもよりますが、5%や2%の還元が受けられます。
事業者は申請を出すと厚労省からIDが発行されます。そして決済会社にも申請し対象店舗になれば、決済手数料の1/3を国が負担してくれます。
しかし、国や関係事業者の対応がお粗末すぎました。
まず、20年6月末までと期限を切っているのに、申請から2か月たってもIDが発行されなかったり、発行されても決済会社が対応に時間がかかって、10月からの施行に間に合わない事業者が続出しました。
うちの店では3種類の決済業者を使っていましたが、10月に間に合ったのは1社だけでした。
のこりの1社は12月になってから。もう1社は12月の半ばになっても来ないので解約しました。
しかしながら、消費者へ与えた影響は大きかったようで、うちのお店では売上の割合で言えば1:2くらいだったのですが、
10月以降1:4くらいになりました。現金売上が減り、キャッシュレス決済が増えたのです。
結果として、1/3を国が負担してるにも関わらず、決済手数料の支払いは増えました。
そりゃそうですよね。1/3を負担しても、キャッシュレス決済が倍になれば、4/3になって負担増です。
さらにキャッシュレス決済の導入推進したため、小さな商店でもカード決済や、なんとかペイが使えるようになりました、
これにより、いわゆるキャッシュフローは悪化します。現金商売のお店はキャッシュレス化で黒字倒産もありえます。
どういう事か、うちを例に挙げると、1日~15日の売上を末日に。16日~末日までの売上を翌15日に振り込まれます。
多くの決済業者がこのサイクルなのですが、要は物を売っても現金が手元にくるのが最大1ヶ月後になるということです。
現金での仕入れが多く、売上がキャッシュレスの場合、自転車操業の経営では売上が入ってくる前に支払いが来てお金が無くて倒産もあり得ます。
ネットの記事で見たのですが、19年の飲食店の倒産数は過去最多だったみたいです。
これがキャッシュレスポイント還元で起こったことです。
いかがでしょうか?
去年10月からの飲食店をとりまく環境は劇的に変化したと思いませんか?
これ以外にも「働き方改革」で拍車をかけた人手不足問題や、それに関連して、大手ファミレスチェーンが元旦を休んだり、
コンビニが24時間営業をやめたりしましたね。
知り合いのお店では元旦から営業したお店もありました。経営を考えれば営業したい気持ちも分かります。
やっているお店が少ないので売上が上がりますが、店主や従業員は疲弊してしまいますけど、個人店が生き残るには
大手チェーンやファミレスとは戦ってはいけませんから。
なんだか愚痴っぽくなってきましたので、この辺にしておきます。
読んで頂いた方が少しでも飲食店に温かい目を向けていただけますように。