昨今、世間で騒がれている、「食の安全」
飲食業界も例外なく、大きな影響を受けています。
その中でも、「~の~農家の野菜」「~の釣った魚」など、出所を明記したメニューが
和洋問わず、人気のようです。
この傾向、悪いことではないし、確かに中国産の食品に比べれば、安全なのは間違いない。
だけど、いささか「行き過ぎ」を感じずにはいられません。
もともとフランス料理は、海に面する地方が少なく、山間部が多い、厳しい食環境の中、
保存食としての料理が発達してきました。
今では流通が発達し、どこでも新鮮な魚貝が手にはいりますが、昔のパリでは、魚料理は
最高の贅沢品でした。
日本も、「江戸前ずし」は、近海の魚介に乏しいことで、仕事をした魚介を寿司にするように
発展してきました。
こうして、恵まれない風土の中で、技術の発達を遂げてきた料理の中において、
今の素材一辺倒の傾向は、少し残念な気がします。
フランス料理の偉大なシェフ達が切り開いて確立した技術が、必要なくなり、衰退していくような、そんな気さえします。
まあ、そんな事を言っても世襲には逆らえないので、僕は細々と六区で、テリーヌやパテや、
リエットを作り続けていきます。